後頭部の頭痛

デスクで後頭部から首の後ろを押さえる女性

後頭部がズキズキする、重く締めつけられる、ビリッと電気が走るなど、頭の後ろが痛むために受診される方はよくおられます。
「脳の病気ではないか」と不安を訴える方もおられます。

後頭部の痛みの感じ方は人それぞれです。
最初は後頭部だけだった痛みが頭全体に広がることもあれば、首の痛みを一緒に感じることもあります。運動中や重いものを持ったときに痛み出すこともあります。

このページでは、脳神経外科専門医・頭痛専門医の視点から、後頭部の頭痛の原因と、見逃してはいけない危険なサインを解説します。

後頭部の頭痛でまず知っておきたいこと

後頭部の頭痛の多くは命に関わらない

後頭部の頭痛で受診する方は多く、その多くは緊張型頭痛や後頭神経痛など、命に関わらない頭痛です。
つらい痛みではあっても、適切に対処すれば和らげることができます。

後頭部が痛いからといって、すぐに「こわい頭痛」と決めつける必要はありません。

椎骨動脈解離は決してまれな病気ではない

一方で、見逃してはいけない病気もあります。そのひとつが椎骨動脈解離(ついこつどうみゃくかいり)です。
首から脳の後ろ側へ向かう血管の壁が裂ける病気で、後頭部の痛みで始まることが多いのが特徴です。

2025年の1年間の患者さんを集計したところ、脳動脈解離と診断された方は約50名おられ、そのほとんどは椎骨動脈解離でした。
いずれも後頭部の痛みで発症したケースです。

椎骨動脈解離は、決してまれな病気ではありません。
だからこそ、後頭部の頭痛では「心配いらない頭痛」と「見逃してはいけない頭痛」を見分けることが大切です。

後頭部の頭痛の主な原因

緊張型頭痛や片頭痛

うつむいた姿勢でスマートフォンを見ながら首の後ろをさする男性

後頭部の頭痛では、緊張型頭痛が多いです。頭の後ろから首筋にかけて、締めつけられるような重い痛みが続きます。

長時間のデスクワークやスマートフォンの操作など、うつむいた姿勢が続くと、首や肩の筋肉がこわばります。
その緊張が頭の後ろの神経を刺激し、痛みにつながります。ストレスや睡眠不足も、緊張型頭痛を強める要因です。

ズキズキと脈打つ片頭痛でも、後頭部に痛みを感じることがあります。

▶︎肩こりと頭痛について

ビリッと電気が走るような後頭神経痛

髪をとかしている途中で後頭部の痛みを感じる女性

後頭神経痛は、後頭部から頭頂部にかけて、ビリッと電気が走るような痛みが数秒〜数分ほど繰り返し起こる頭痛です。
髪をとかしたときや首を動かしたときに痛みが走る、頭皮に触れると痛むといった特徴があります。

後頭部の皮膚の感覚を伝える神経が、首の筋肉の緊張などで刺激されて起こると考えられています。
帯状疱疹で、特徴的な発疹・水泡が出現する前に神経痛のような痛みを感じることもあります。

▶︎後頭神経痛・耳の後ろの痛みについて

脳や血管の病気が原因のことも

頻度は低いものの、椎骨動脈解離、くも膜下出血、脳腫瘍など、脳や血管の病気が後頭部の痛みとして現れることもあります。
首の骨や関節の異常が原因の頸原性頭痛(けいげんせいずつう)も、後頭部の痛みの原因になります。

このように、後頭部の頭痛にはさまざまな原因があります。
いくつかの原因が重なっていることもあるため、痛み方やきっかけ、ほかの症状をあわせて考えることが大切です。

痛み方から考えられる後頭部の頭痛の原因

後頭部の頭痛は、痛み方によって考えられる原因がある程度しぼられることがあります。
ただし痛み方だけで判断はできないため、あくまで目安としてご覧ください。

締めつけられるような重い痛み

頭の後ろから首にかけて、ギューッと締めつけられるような重い痛みが続く場合は、緊張型頭痛のことがあります。
夕方にかけて強くなる、肩こりを伴うといった特徴があります。

ビリッと走る痛みやズキンと脈打つ痛み

ビリッと電気が走るような一瞬の痛みを繰り返す場合は、後頭神経痛のことがあります。
ズキンズキンと脈打つ痛みで、動くと悪化したり吐き気を伴ったりする場合は、片頭痛の可能性があります。

突然始まった強い痛み

ある瞬間から突然始まった強い痛みは、椎骨動脈解離やくも膜下出血など、血管の病気の可能性があります。
痛み出した時刻を、何時何分何秒まではっきり言えるような頭痛は、特に注意が必要です。

痛み方 考えられる主な原因 受診の目安
締めつけられるような重い痛み 緊張型頭痛 つらい状態が続く場合は受診を
ビリッと電気が走る一瞬の痛み 後頭神経痛 痛みが強い、繰り返す場合は受診を
ズキンと脈打つ痛み・吐き気 片頭痛 日常生活に支障がある場合は受診を
突然始まった強い痛み 椎骨動脈解離・くも膜下出血など すぐに受診。動けないほどなら119番

▶︎頭頂部のズキズキする頭痛について

後頭部の片側だけが痛いときに考えること

左右どちらかで原因が決まるわけではない

「右側だけ痛い」「左側だけ痛い」と気にされる方は多いのですが、右か左かによって原因が決まるわけではありません。
緊張型頭痛でも後頭神経痛でも、片側だけが痛むことはあり得ます。

片側の後頭部と首に強い痛みがあるときは血管の異常も考える

片側の後頭部や首に強い痛みがあり、このような痛みを過去に経験したことがない場合は、椎骨動脈解離など血管の異常の可能性を考えて診察を進めます。

椎骨動脈は首の左右に1本ずつあり、解離はどちらか片側に起こることがほとんどです。
そのため、片側の後頭部と首の痛みは、重要なサインのひとつになります。

見逃してはいけない後頭部の頭痛のサイン

次のような頭痛は要注意です。当てはまる場合は、早めに脳神経外科を受診してください。

運動や力んだ拍子に始まった痛みや始まった時間がわかる痛み

  • 片方の後頭部と首に、今までにない強い痛みを感じる
  • 運動中や、重いものを持つなど力んだ拍子に頭痛が始まった
  • 最初に痛み出した時間を特定できる(「何時何分何秒に急に痛くなった」と言える)

普段と違う痛みや日に日に強くなる痛み

  • もともと頭痛もちだが、いつもと違う痛み方をしている
  • 日に日に頭痛が強くなっている

50歳を過ぎて初めて起こった頭痛

片頭痛などの頭痛は、本来は若い世代に始まることが多いものです。
50歳を過ぎてから初めて頭痛を感じた場合は、ほかの病気が隠れていないか確かめることが勧められます。

突然の激しい頭痛で身動きがとれない場合は、ためらわず119番に連絡してください。
手足のまひやろれつが回らないなどの症状を伴う場合も同様です。

▶︎こわい頭痛とこわくない頭痛の違いはこちら

首をひねったあとの後頭部の痛みと椎骨動脈解離

首をひねった拍子に頭痛が起こることは多い

「首を急に回したら、後頭部が痛くなった」。こうした、首をひねった拍子に起こる頭痛は珍しくありません。
多くは首の筋肉や関節への負担によるものです。

ただし、その際にまれに椎骨動脈や頸動脈の解離を起こすことがあり得ると言われており、注意が必要です。
スポーツ中に首をひねったとき、振り向いたとき、美容院などで首を後ろにそらしたときなどが、きっかけになることがあるとされます。

椎骨動脈解離とはどんな病気か

椎骨動脈解離は、首の骨の中を通って脳の後ろ側へ血液を送る椎骨動脈の壁が、内側から裂ける病気です。
裂けた部分から血液が入り込み、血管が狭くなったり、こぶのようにふくらんだりします。

症状は、後頭部や首の痛みだけのこともあります。
めまいやふらつき、物が二重に見える、飲み込みにくいといった症状を伴うこともあります。

頭痛だけで済み、自然に回復することもあります。一方で、脳梗塞やくも膜下出血に進むこともあるため、早い段階で見つけることが大切です。
首をひねったあとに後頭部や首の強い痛みが続く場合は、自己判断せずに受診しましょう。

後頭部の頭痛で行う検査

MRIで脳と血管を詳しく調べる

クリニックのMRI検査室

後頭部の頭痛では、問診と神経の診察に加えて、必要に応じてMRI検査(MRI・MRA)で脳や血管に問題がないかを確かめます。
MRIは放射線による被ばくがない検査です。

椎骨動脈解離が疑われる場合には、撮影方法を工夫して詳しく調べます。
例として、そのひとつがBPAS(ビーパス)と呼ばれる撮影法です。首から脳へ向かう血管の外側の形を写し出す方法です。
血管の内側を写すMRA検査とあわせることで、解離をより見つけやすくなります。

MRIの画像から、脳や血管の位置関係まで読み取ります。
経験を積んだ脳神経外科医が画像を読むことで、診断の精度が高まります。

神経痛に見えて別の病気が隠れていることもある

後頭神経痛のような痛みでも、検査をすると、原因となる脳や血管の病気(二次性頭痛)が見つかることがあります。
神経痛と思われる頭痛の中に、二次性頭痛が隠れていることも稀ではありません。

「よくある神経痛だろう」と決めつけず、適切な診断を受けたうえで治療を始めることが大切です。

後頭神経痛の治療と日常生活での注意

痛みが強いときは副作用の少ない薬から

後頭神経痛は命に関わる病気ではありませんが、日常生活への支障が大きいことがしばしばあります。
髪をとかす、枕に頭をのせるといった何気ない動作で痛みが走り、つらい思いをする方も少なくありません。

痛みが強い場合は、薬で痛みを和らげます。
原則として副作用の少ない薬から使い、症状の強さに応じて薬の内容を調整していきます。

治るまでの期間には個人差がある

「後頭神経痛はいつ治るのか」は、多くの方が気にされる点です。
ただ、治るまでの期間には個人差が大きく、一概には言えません。数日で落ち着く方もおられますが、痛みを繰り返す方もおられます。
過去にない痛みや、痛みが強いとき・長引くときは、自己判断で様子を見続けずに医師に相談しましょう。

猫背など首に負担のかかる姿勢を見直す

良い姿勢でパソコン作業をする女性

後頭部の頭痛では、いわゆる猫背の傾向がないかもひとつのポイントです。
背中が丸まり、頭が前に出た姿勢は、首の後ろの筋肉に大きな負担をかけます。

パソコンの画面を目の高さに合わせる、こまめに休憩をとって首や肩を動かすなど、首に負担をかけない工夫を続けましょう。

首や肩のこりからくる緊張型頭痛では、入浴で首や肩を温めたり、軽いストレッチをしたりすると楽になることがあります。
一方で、強く揉んだり、首を勢いよく回したりするのは避けましょう。首に強い力がかかると、かえって症状が悪化することがあります。

後頭部の頭痛のよくある質問

後頭部の頭痛は何科を受診すればいいですか

A. 脳神経外科や頭痛外来などをおすすめします。
後頭部の頭痛では、椎骨動脈解離など脳や血管の病気を確かめるためには、MRI検査ができる医療機関が安心です。

後頭部がズキズキ痛むのは危険ですか

A. ズキズキする痛みの多くは、片頭痛や緊張型頭痛など命に関わらない頭痛です。
ただし、今までにない痛み、突然始まった強い痛み、片側の後頭部と首の強い痛み、日に日に強くなる痛みは、早めの受診が必要です。

後頭神経痛はどのくらいで治りますか

A. 治るまでの期間には個人差があります。数日で落ち着くこともあれば、繰り返すこともあります。
痛みが強い、長引く場合は、薬で痛みを和らげる治療があります。

後頭部の頭痛と一緒に吐き気があるときはどうすればいいですか

A. 吐き気を伴う頭痛は、痛みが強いサインです。片頭痛でもよく起こります。
ただし、今までにない痛みや突然の激しい頭痛に吐き気や嘔吐を伴う場合は、くも膜下出血などの可能性もあるため、すぐに受診してください。

▶︎頭痛と吐き気について

首をポキポキ鳴らすと楽になるのですがしても大丈夫ですか

A. おすすめできません。首を鳴らす癖や、首を強くひねる手技療法によって、症状が悪化するケースがあります。
首をひねった拍子に血管の解離が起こることもまれにあるとされるため、首に強い力をかけることは避けましょう。

後頭部の頭痛で不安な方へ

後頭部の頭痛が起こったからといって、ただちに「こわい頭痛」とは限りません。
一方で、脳動脈解離や脳動脈瘤、くも膜下出血など、緊急を要する病気のことも、まれにあります。
不安に感じるようであれば、時機を逃さずに受診してください。

記事監修者

院長紹介
院長 高瀬 卓志

院長略歴

  • 京都市出身、慶應義塾大学文学部中退、仮面浪人を経て、昭和63年大阪医科大学(現 大阪医科薬科大学)卒業、医学博士
  • 大阪府三島救命救急センター、大阪医科大学附属病院脳神経外科・麻酔科等にて臨床研修
  • 大阪医科大学脳神経外科助手、北野病院脳神経外科副部長、多根総合病院脳神経外科医長等を歴任
  • 平成20年11月、たかせクリニック開院

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