頭痛とめまい
あなたの「ぐるぐる」「ふらふら」の正体

頭痛とめまいに悩む女性。こめかみを押さえてつらそうにする様子と、めまいでふらつく様子

「頭が痛いと思ったら、ふらふらしてきた」
「めまいがしていたら、頭まで痛くなってきた」

こんな経験をお持ちの方もおられるでしょう。
このコラムでは、頭痛にめまいが伴う理由や、最近注目されている「前庭性片頭痛」などについてご説明します。

頭痛とめまいが同時に起こるのはなぜ?

頭痛とめまいがセットで起こりやすい理由

頭痛とめまいは脳の中でつながりの深い神経回路が関わっているため、同時にまたは交互に起こることがあります。

私たちの「平衡感覚(バランス感覚)」は、

  • 耳の奥にある三半規管や耳石(じせき)
  • 目からの視覚情報
  • 足の裏などからの感覚
  • 小脳や脳幹(のうかん)

これらが連携して成り立っています。

片頭痛は「脳の過敏な状態」から起こる病気で、光・音・においに敏感になるのと同様に、「バランス感覚の信号処理」にも過剰な反応が起きることがあります。 その結果、頭痛とめまいが一緒に現れることがあるのです。

また、脳内で痛みの信号を伝える物質(CGRPというペプチド)が、平衡感覚に関係する神経にも影響することがわかっています。

一時的な不調と「病気」の違い

【あまり心配しなくてよいケース】

  • 疲れ・睡眠不足・脱水・空腹のときにだけ起こる
  • 症状が数分以内におさまる
  • その後はすっきりする
  • 繰り返さずにおさまる

【受診を考えるべきケース】

  • 繰り返し起こる(月に何度も)
  • 日常生活や仕事に支障が出る
  • 症状がどんどん強くなっている
  • 「いつもと違う」と感じる

頭痛とめまいを引き起こす主な原因

片頭痛(前庭性片頭痛を含む)

通常の片頭痛

こめかみを押さえてつらそうにする女性。前頭部の痛みを赤く表現した頭痛のイメージ

片頭痛は、日本人の約8〜10人に1人がもつ「脳や脳血管の過敏症」です。
頭の片側(または両側)がズキズキ・ドクドクと痛み、吐き気、光・音への過敏さを伴います。
また、頭痛の前に閃輝暗点と呼ばれる、ギザギザした光や視野の一部が見えにくくなる前兆が現れることもあります。

前庭性片頭痛(ぜんていせいへんずつう)── しばしば見逃される病気

「めまいがひどいのに、耳鼻科では異常なしと言われた」
「ぐるぐる・ふらふらが繰り返すのに、原因がわからない」

こんな方は「前庭性片頭痛」かもしれません。

前庭性片頭痛とは、片頭痛を背景に、めまい発作を繰り返す病気です。
「自発性の反復するめまい」の原因として最も多いと考えられており、一般人口の約1〜3%が該当するとされています。

【前庭性片頭痛の特徴】
  • めまい発作が5分〜72時間続く(数時間〜1日程度が多い)
  • 毎回、頭痛を伴うわけではない(めまいだけのこともある)
  • めまいのときに、頭痛・光過敏・音過敏・視覚的な前兆のうち、少なくとも1つが伴うことが多い
  • 過去または現在に片頭痛の病歴がある
  • 回転性めまい(ぐるぐる)だけでなく、ふらふら感・浮動感として現れることも多い
  • スマートフォンのスクロール・スーパーの陳列棚・映画のアクション場面などで症状が誘発・悪化することがある
  • 耳鳴り・耳の詰まり感・聴こえにくさを感じることもある(両耳が多い)
【片頭痛の「誘因」と共通することが多い】

生理(月経)前後 / 寝不足・寝すぎ / ストレスや緊張後 /空腹・脱水 / 気圧の変化 / 強い光・臭い / 特定の食品

他の疾患との鑑別ポイント(よく似た病気との違い)

良性発作性頭位めまい症(BPPV)

良性発作性頭位めまい症(BPPV)の解説図。内耳の三半規管に剥がれ落ちた耳石と、頭の向きを変えることでめまいが起こる仕組みを示すイラスト

頭を動かしたときだけ起こる「短いめまい(1〜2分以内)」が特徴。
寝返り・起き上がり・上を向くといった頭位の変化で誘発される。
頭を動かさなければ症状はほぼない。

→前庭性片頭痛は自発的に(頭を動かさなくても)起こることが多く、発作が5分以上続く点が主な違い。
ただし、前庭性片頭痛でも頭位によって悪化することがあり、BPPVとの鑑別が難しい場合もあります。

メニエール病

メニエール病の解説図。内耳の構造と、耳鳴り・回転性めまい・難聴・吐き気といった主な症状を示すイラスト

「グルグルする激しいめまい(20分〜12時間)+耳鳴り+聴力低下+耳の詰まり感」が典型的な三徴。難聴の検査(聴力検査)で低音部の感音性難聴が確認されることが特徴。
症状が片耳に限定されることが多い。

→前庭性片頭痛では、難聴は原則として伴わず、耳の症状は両耳に出ることが多い。
ただし、両者は合併することもあり、専門医での精密検査が重要です。

持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)

持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)の解説図。立ち姿勢や人混み、スーパーの陳列棚、車の移動などでめまいが悪化する様子を示すイラスト

「ほぼ毎日続く」ふらつき・浮動感・不安定感が3か月以上続く。
立っているとき・動いているとき・複雑な視覚刺激(人混み、スクロール等)で悪化する傾向がある。

→前庭性片頭痛は「繰り返す発作」であり、発作と発作の間にはあまり症状がない。
なお、前庭性片頭痛とPPPDは合併することがあります。

自律神経の乱れによるケース

過労・睡眠不足・強いストレスが続くと、自律神経のバランスが崩れ、血管の収縮・拡張の調節が乱れます。
その結果、頭痛・立ちくらみ・ふらつきが起こることがあります。
特に10〜20代の若い方に多い「起立性調節障害」もこの仲間です。

耳や平衡感覚の異常によるめまい

内耳(三半規管・前庭)や前庭神経の問題から、強いめまい(回転感や浮動感)が起こることがあります。

【代表的な疾患】

  • 良性発作性頭位めまい症(BPPV) ──前述
  • メニエール病 ──前述
  • 前庭神経炎(突然始まる強いめまいが数日続く)
  • 慢性中耳炎・突発性難聴 など

血圧・貧血・脱水など全身状態が関係するケース

めまいの原因を表すイメージ。血圧測定、頭を押さえる女性、血管内の赤血球、動悸や脱水でつらそうにする様子を示すイメージ
  • 低血圧・高血圧:立ちくらみや、頭がズーンと重だるい頭痛
  • 貧血:動悸・ふらつき・頭痛がセットで現れやすい
  • 脱水・熱中症:体温上昇とともに頭痛・めまいが急激に悪化
  • 低血糖(空腹時):冷や汗・手の震えを伴うふらつき・頭痛

これらは内科的に血液検査や血圧測定、心エコー検査などで診断されます。

注意が必要な危険な頭痛・めまいの特徴

すぐに救急受診を考えるべき症状

以下の症状が1つでもあれば、ためらわずに救急受診または救急車を呼んでください。

  • ⚠「いきなり殴られたような」突然の激しい頭痛(今まで経験したことのない最悪の頭痛)
  • ⚠ 意識がぼんやりする・呼びかけに反応が悪い
  • ⚠ ろれつが回らない・言葉が出ない・理解できない
  • ⚠ 片側の手足の麻痺・しびれ
  • ⚠ 物が二重に見える・視野の半分が欠けたまま
  • ⚠ 激しい嘔吐を伴い、歩くことができないほどのめまい
  • ⚠ 首が硬く、あごを胸につけようとすると強い痛みがある(髄膜刺激症状)
  • ⚠ 頭や首を打った後に起こった頭痛・めまい

脳の病気が疑われるサイン

以下の症状は脳梗塞・脳出血・脳腫瘍・髄膜炎などを示す可能性があります。早急に受診してください。

  • 頭痛が日増しに強くなっている
  • いつも同じ場所(片側など)だが、持続的に痛む
  • 朝起きたときに頭痛が強い、頭痛で目覚める
  • かがむ・いきむなど頭に圧力がかかると強くなる
  • 50歳以上で初めて経験する種類の頭痛
  • めまいに加えて、手がうまく動かせない・歩行が乱れる

「いつもと違う」と感じたときの考え方

片頭痛やメニエール病など、繰り返す病気をお持ちの方でも、「今回はいつもと違う」と感じたら、それを「ただの頭痛・めまい」と決めつけないことが大切です。

  • 痛みの始まり方がいつもより急激ではないか?
  • 痛みの場所や性質がいつもと違わないか?
  • 意識・言語・手足の動きに変化はないか?
  • 発熱や首の硬さはないか?

「なんとなくおかしい」という直感も大切にしてください。

頭痛とめまいがあるときの正しい対処法

自宅で様子を見る場合のポイント

  • 安静にする

    静かで薄暗い部屋に横になりましょう。
    片頭痛は光・音・においで悪化しやすいため、刺激を遠ざけることが基本です。

  • 水分補給

    少量ずつこまめに水や薄い経口補水液を飲みましょう。
    嘔気がなければ、スポーツドリンクや経口補水液も有効です。

  • 体を温める・冷やす

    頭痛には冷たいタオルや氷枕を当てると楽になる方が多いですが、首・肩のこりを伴う場合は温めが効くこともあります。
    自分に合った方法を試してみましょう。

  • 頭痛日記をつける

    「いつ・どのくらいの強さ・どんな状況で起きたか」をメモしておくと、受診時に非常に役立ちます。

やってはいけない対処

  • 市販の鎮痛薬を月に10日以上、毎月飲み続ける──「薬物乱用頭痛(MOH)」と呼ばれる、かえって頭痛が慢性化する状態を招くことがあります。
    鎮痛薬・トリプタン系薬は月10日以内の使用を目安に。
  • めまいのたびに「めまい止め(抗ヒスタミン薬等)」を頻繁に使う──これも使いすぎると症状が慢性化する可能性があります。
    症状が強いときの一時的な使用にとどめましょう。
  • 「頭痛はいつもあるから」と危険なサインを見逃す──前述の危険な症状が出たら、迷わず受診してください。
  • ひたすら横になって安静にしすぎる──めまいの種類によっては、適度に動くことが回復を助けます(特に良性発作性頭位めまい症や前庭神経炎の回復期)。担当医の指導に従いましょう。

症状を悪化させない生活上の注意

  • 睡眠

    寝すぎ・寝不足のどちらも片頭痛の誘発要因になります。
    毎日できるだけ同じ時間に起き、7〜8時間の睡眠を心がけましょう。

  • 食事・水分

    空腹・脱水は片頭痛・めまいの大きな誘因です。
    食事は抜かず、こまめな水分補給を続けましょう。
    チーズ・赤ワイン・チョコレート・MSG(うま味調味料)・人工甘味料・カフェイン(過剰摂取)は、片頭痛の誘因となることが報告されています。

  • ストレス管理

    強いストレスがかかったときだけでなく、「緊張が解けた後」(週末・休暇の初日など)にも片頭痛が起きやすいことが知られています。
    ストレスをためない工夫と、上手な発散方法を見つけましょう。

  • 運動

    定期的な有酸素運動(ウォーキング・水泳・軽いジョギング)は、片頭痛の予防に役立つことが示されています。
    ただし激しすぎる運動は誘因になることもあるため、無理のない範囲で続けましょう。

  • 乗り物・視覚刺激

    スマートフォンの長時間スクロール・大型ショッピングモール・人混み・動画視聴(特にアクション映像)は、前庭性片頭痛の症状を悪化させることがあります。
    体調の悪いときは意識的に避けましょう。

病院を受診する目安と相談先の選び方

どのタイミングで受診すべきか

すぐ受診

両手を前に出した様子。手のしびれや震え、力の入りにくさといった神経症状のイメージ
  • 前述の「危険なサイン」が1つでもある
  • 突然始まった、今まで経験のない激しい頭痛・めまい
  • 意識・言葉・手足の動きに異変がある
  • 頭部への打撲・事故の後に起こった症状

早めに受診(数日以内)

めまいやふらつきで壁に手をつき、こめかみを押さえてつらそうにする女性
  • めまいが強く、歩行や日常生活が困難
  • 嘔吐が続いて水分も取れない
  • 頭痛・めまいが以前よりも明らかに悪化している

受診を検討(次の診察日程を予約)

夜のベッドで目を開けたまま眠れずにいる女性。不眠や睡眠不足のイメージ
  • 頭痛・めまいが月に2〜3回以上繰り返している
  • 市販薬を飲んでいるが効きにくくなってきた
  • 日常生活・仕事・睡眠に影響が出るようになった
  • 「これが片頭痛なのか、別の病気なのか」を確認したい

何科を選ぶかの考え方

頬に手を当てて考え込む女性。頭痛やめまいの症状について思いを巡らせる様子
  • 頭痛が主な症状の場合

    →頭痛外来・脳神経外科・脳神経内科

  • めまい・耳鳴り・難聴が主な症状の場合

    →耳鼻咽喉科(特にめまいを専門とする外来)

  • 頭痛とめまいの両方がある場合、または繰り返す場合

    →頭痛外来・脳神経外科・脳神経内科が最初の相談先として適切です。
    前庭性片頭痛は「頭痛の専門医」が診断・治療をリードします。

  • 「危険な頭痛・めまい」が疑われる場合

    →脳神経外科または救急外来

※ かかりつけの内科やクリニックに相談して紹介してもらうのもスムーズな方法です。

受診時に伝えるとよい情報

以下を事前にメモしておくと、診察が非常にスムーズになります。

症状について

  • いつ(初めていつ起きたか、最近はいつ起きたか)
  • どのくらいの頻度で起きるか(月に何回程度?)
  • どのくらい続くか(数分・数時間・1日以上など)
  • どんなめまいか(ぐるぐる回る感じ?ふらふら?浮いている感じ?)
  • どんな頭痛か(ズキズキ?締め付け?片側・両側?)
  • 頭痛とめまいは同時に起きるか、別々に起きるか
  • 光・音・においへの過敏さはあるか
  • 吐き気・嘔吐はあるか
  • 耳鳴り・耳の詰まり感・聞こえにくさはあるか
  • 発作の前に何か前兆はあるか(視野の異常、光など)

生活・背景について

  • 睡眠・ストレス・生理周期との関係
  • 思い当たる誘因(食事・疲れ・気圧など)
  • 現在飲んでいる薬(市販薬・サプリメントを含む)
  • これまでにかかった頭部・耳の病気
  • 家族に片頭痛の人がいるか

まとめ

頭痛とめまいは、一見別々の症状のように見えて、片頭痛という共通の背景から起こることがよくあります。

特に「前庭性片頭痛」は、めまいの原因として最も多い疾患のひとつですが、まだ広く知られておらず、BPPV・メニエール病・自律神経失調症などと混同されることが少なくありません。

繰り返すめまい・頭痛でお悩みの方は、ぜひ一度、頭痛外来や脳神経外科・脳神経内科にご相談ください。

正確な診断と適切な治療により、多くの方の症状は改善できます。
「慣れてしまった辛さ」を、そのままにしないでください。

【参考文献・準拠ガイドライン】

記事監修者

院長紹介
院長 高瀬 卓志

院長略歴

  • 京都市出身、慶應義塾大学文学部中退、仮面浪人を経て、昭和63年大阪医科大学(現 大阪医科薬科大学)卒業、医学博士
  • 大阪府三島救命救急センター、大阪医科大学附属病院脳神経外科・麻酔科等にて臨床研修
  • 大阪医科大学脳神経外科助手、北野病院脳神経外科副部長、多根総合病院脳神経外科医長等を歴任
  • 平成20年11月、たかせクリニック開院

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