片頭痛の新しい予防薬 アクイプタ(アトゲパント)

「片頭痛の予防薬を飲み始めても、効果を実感できなかった」
2026年、そんな意識を変えるかもしれない、新しいタイプの予防薬、アクイプタ(一般名:atogepant)が日本でも承認され、もうすぐ使用可能となります。
この薬のどこが新しいのか、どんな片頭痛患者さんに向いているのかを考えます。

 


1. アクイプタは、どこが新しいのか?

片頭痛が起こる大きな原因のひとつに、脳内で分泌される「CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)」という物質があります。
CGRPは痛みの信号を増幅し、血管を拡張させ、片頭痛の発作を引き起こす”引き金”の役割を担っています。

アクイプタは、このCGRPが受容体(鍵穴)に結合するのをブロックする「CGRP受容体拮抗薬」という種類のお薬です。
根本的な原因に働きかける、まったく新しいメカニズムの予防薬です。

Key Feature
これまでのCGRP関連の注射予防薬と同じ仕組みで、片頭痛の根本原因に働きかけながら、飲み薬として1日1回の内服で効果を現します。。
用量を少しずつ増やす「漸増」も不要で、最初から一定量で始められます。

そして最も注目すべきは、効果の現れ方の早さです。
3つの大規模臨床試験(ADVANCE・ELEVATE・PROGRESS)が明らかにした、効果発現のタイムラインは次のように示されます。

Day 1 ・ 服用当日
片頭痛が出た患者さんの割合が、プラセボ(偽薬)と比べて有意に少なかったことが証明されました。
episodic migraine(発作性片頭痛)では、服用していない群の約半分以下という結果も出ています。

Week 1 ・ 1週目から
週あたりの片頭痛日数が、すでにプラセボより有意に減少
同時に「日常活動のしにくさ」「体の動かしにくさ」といった生活機能の改善も、1週目から確認されました。
予防薬で1週目から機能改善が示されたのは、世界初の報告です。

Weeks 4 ・ 1か月後
月間片頭痛日数がプラセボに比べて平均2〜3日以上の有意な減少
QOL(生活の質)スコアも、3試験すべてで一貫して改善しました。

 


2. 今までの薬と、何が違うのか?

片頭痛の予防薬には、大きく分けて「従来薬」と「CGRP関連薬」の2つの流れがあります。
アクイプタはCGRP関連薬の中でも「飲み薬(経口)」という点で、これまでの選択肢と異なる位置づけです。

種類 主な特徴 効果発現
従来の内服予防薬 もともと別の病気の薬。少量から徐々に増量が必要。副作用(眠気・体重増加など)が問題になることも 2〜3か月後
CGRP関連注射薬 CGRPに直接作用する専用薬。月1回または3か月1回の注射。早期効果が証明されている 1週目〜
アクイプタ 飲み薬でありながら、注射薬と同等の早期効果。漸増不要。1日1回服用 当日〜1週目

 

注射が苦手な方、忙しくて医療機関に規則正しく通うことが難しい方にとって、「飲み薬で注射薬並みの早期効果が得られる」ことは大きな意味を持ちます。

 


3. どのような片頭痛患者さんに向いているか?

アクイプタが特に力を発揮できると考えられる患者さんを、臨床試験のデータをもとにご紹介します。

🔄従来の予防薬が効かなかった方
β遮断薬・トピラマート・バルプロ酸・アミトリプチリンなど、2〜4種類を試しても改善しなかった方を対象にしたELEVATE試験でも、明確な有効性が示されました。

📅慢性片頭痛の方
月に15日以上頭痛がある慢性片頭痛でも有効性が確認されています。鎮痛薬を飲みすぎている方(薬物乱用頭痛)も対象になりました。

すぐに効果を実感したい方
「効果が出るまで何か月も待つのはつらい」「早く仕事や育児に支障なく過ごしたい」という方に、1週目から変化を感じられる可能性があります。

ただし、片頭痛の重症度や他の病気・薬との兼ね合いによって判断が変わります。
「自分に合うかどうか」は、専門医にご相談ください。

 


4. 副作用と注意点について

アクイプタは3つの大規模試験を通じて、総じて安全性と忍容性が良好であることが確認されています。
治療を中止するほどの副作用が起きた方の割合は、プラセボと大差がありませんでした。

・主な副作用として便秘・悪心(吐き気)・倦怠感・食欲減退などが報告されています
・服用を始めて4週間以内に副作用が出た方の割合は、atogepant群33〜41%・プラセボ群29〜33%で大きな差はありませんでした
・重篤な副作用は非常にまれで、死亡例はありませんでした
・用量を少しずつ増やす必要がないため、漸増に伴う副作用が起きにくい構造になっています

⚠️ 特にご注意いただきたいケース
・妊娠中・授乳中の方:安全性データが十分でないため、原則として使用できません
・肝臓・腎臓の機能が低下している方:用量の調整が必要な場合があります
・他のCGRP薬(注射薬)を使用中の方:重複投与は避ける必要があります
・強いCYP3A4阻害薬を服用中の方(一部の抗真菌薬・抗HIV薬など):相互作用があります。現在服用中のお薬を必ずお知らせください

副作用に関する研究集団は女性・白人が多く、全患者への完全な一般化には今後のデータ蓄積が必要です。

「副作用が心配」という方も、まず気になることをご相談ください。
個々の状況に合わせて、リスクとベネフィットを検討します。

アクイプタは、「予防薬は効くまで時間がかかる」という今までの片頭痛治療の常識を変える可能性を持つ薬剤です。
服用当日から効果が始まり、1週目から生活の質が改善するというデータは、
長年片頭痛に苦しんでいる方にとって、大きな希望になりえます。

一方で、すべての方に適しているわけではありません。
「自分の片頭痛にこの薬が合うかどうか」は、ぜひ専門医への受診からはじめてみてください。

 

参考 : Lipton RB et al., Neurology 2025;104:e210212

※本コラムは情報提供を目的としており、診断・治療の指示ではありません

 

医療法人脳神経外科たかせクリニック