「頭痛ぐらい」で病院へ行く?


「また頭痛か」と市販薬を飲み、どうにか一日をやり過ごす。そんな日々を繰り返している方は、ぜひ最後までお読みください。頭痛は「我慢するもの」ではなく、「きちんと治療できる病気」です。

 


01 頭痛は、あなたの時間と成果を奪っている


頭痛の影響は「痛みで寝込んでしまう」だけにとどまりません。仕事をしていても集中できずパフォーマンスが上がらない、家事をしていても途中で止まってしまう・・・こうした「なんとか動いているけれど本調子ではない」状態は、プレゼンティーイズム(presenteeism)と呼ばれます。

欠勤(仕事を休む)よりも、実はこのプレゼンティーイズムによる損失のほうがはるかに大きいことが明らかになっています。頭痛発作中の作業能率は、片頭痛で最大 50% 近く低下するとも報告されており、頭痛に伴う経済損失の約 80% 以上が、休んだことによるものではなく、出勤しながらも能率が落ちていることによって生じているとされています。


(The Journal of Headache and Pain (2025) 26:240より NotebookLMにて生成)

ある市役所職員を対象とした調査の推計では、慢性頭痛による年間の損失は「前兆のない片頭痛」のグループで最も高いことがわかりました。これを患者さん一人当たりの年間賃金損失額で計算すると、約35万5,800円にも上りました。驚くべきことに、この経済的損失の81.6%がプレゼンティーズム(出勤時の生産性低下)に起因するものでした。

職場での成果が思うように上がらない、家事や育児に集中できない・・・こうした積み重ねは、長い目で見れば自分自身の評価や生活の質、ひいては収入にもじわじわと影響します。「頭痛ぐらいで」と思わず、正面から向き合うことが大切です。


(The Journal of Headache and Pain (2025) 26:240より NotebookLMにて生成)

 


02 「見えない病気」だから、誤解される


頭痛の辛さは、外から見えません。MRIやCTの検査でも所見としては現れません(検査は二次性頭痛の鑑別のため行います)。だからこそ、「大げさではないか」「怠けているのでは」と周囲に誤解されやすいのです。

実際、ある大規模な職場調査では、片頭痛をもつ従業員の約 30% が「職場の同僚や上司に自分の頭痛が理解されていない」と感じており、「周囲に余計な負担をかけている」という罪悪感(内在化されたスティグマ)を抱えている方も少なくないと報告されています。

こうした「理解されない経験」の積み重ねは、じわじわと自信や自尊心を傷つけていきます。頭痛を抱えながら一人で耐えてきた方が、適切な医療につながることで「自分のせいではなかった」と初めて気づかれることは、決して珍しくありません。

 


03 6割以上の方は「我慢」してしまっています


潜在的なリスクと社会への影響があり、これほど深刻な生産性低下と経済的損失を引き起こしているにもかかわらず、現在医療機関を受診している患者さんはわずか10.4%に留まっています。

市販の鎮痛薬は、急場をしのぐためには一定の効果があります。しかし、慢性的な頭痛をもつ方の多くが市販の鎮痛薬に頼り続けているのが現状です。国内の調査では、慢性頭痛をもつ方の 60〜80% が市販薬のみで対処しており、専門医を受診して治療を受けているのはごく一部にとどまります。


(The Journal of Headache and Pain (2025) 26:240より NotebookLMにて生成)

 


04 市販薬の使い過ぎが、頭痛をさらに悪化させることがある


ここで注意していただきたいのが、薬剤の使用過多による頭痛、いわゆる薬物乱用頭痛(MOH:Medication Overuse Headache)です。これは、痛みを抑えるために飲み続けていた薬そのものが、頭痛をより慢性化・悪化させてしまうという状態です。

目安として、月に 10 日以上鎮痛薬を使用している場合は、このリスクが高まります。「以前より薬が効きにくくなってきた」「頭痛の回数がだんだん増えてきた」と感じている方は、早めに専門医に受診してください。適切な予防薬・治療薬を使うことで、鎮痛薬に頼りすぎずに済むようになる可能性があります。


(The Journal of Headache and Pain (2025) 26:240より NotebookLMにて生成)

 


05 頭痛の背後に、脳や血管の病気が隠れていることも


頭痛のほとんどは片頭痛や緊張型頭痛といった、こわくない頭痛(一次性頭痛)ですが、まれに、脳腫瘍・くも膜下出血・脳出血・髄膜炎など、速やかな治療が必要な病気による、こわい頭痛(二次性頭痛)のことがあります。

自己判断で市販薬を飲み続けることで、こうした危険な頭痛を見逃してしまうリスクもゼロではありません。「いつもと違う頭痛」「急に始まった激しい頭痛」には、特に注意が必要です。

 


06 こんなときは、頭痛専門医へ


以下のような頭痛がある場合は、一度専門医(脳神経外科/脳神経内科/頭痛外来)を受診され、必要に応じてMRIやCTなどの検査を受けることをお勧めします。

▶ 吐き気・嘔吐を伴う頭痛
▶ 光や音が気になり、暗く静かな場所にいたくなる
▶ 体を動かすと頭痛がひどくなる
▶ 頭痛の前に視野がちらつく、手足がしびれるなどの前兆がある
▶ 「今までで一番ひどい」突然の激しい頭痛(雷鳴頭痛)
▶ 以前と痛みの性質・場所・感じ方が変わってきた
▶ 徐々に頭痛の頻度や強さが増してきた
▶ 発熱・首のこわばり・意識の変化を伴う頭痛
▶ 市販薬が効かなくなってきた、または使う回数が増えてきた

一つでも心当たりのある方は、「大したことではないかも」と判断せず、まず専門医に受診してください。


(The Journal of Headache and Pain (2025) 26:240より NotebookLMにて生成)

 


06 頭痛は病気です、なので治療できます


片頭痛は、遺伝的な素因をもつ方の脳が、さまざまな刺激に対して過剰に反応することで起こります。気合いや根性でどうにかなるものではなく、神経・血管にかかわる複雑なメカニズムが関与しています。

近年、片頭痛の病態解明が急速に進み、CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)という神経物質を標的にした新しいタイプの予防薬・急性期治療薬が登場しています。これらを適切に使うことで、頭痛の頻度を大幅に減らしたり、発作の程度を軽くしたりすることが以前よりもずっとしやすくなりました。

実際、職場で頭痛の教育プログラムと専門家によるオンライン相談を組み合わせた取り組みでは、参加者の欠勤日数とプレゼンティーイズムが改善し、年間約 15 日分の生産性が回復したという報告もあります。

頭痛は「仕方がないもの」ではありません。正しい診断を受け、あなたに合った治療法を見つけることで、頭痛のない日々、または頭痛に振り回されない毎日に近づくことができます。

 


頭痛を「ひとりで抱えない」でください。

長年の頭痛に慣れてしまい、「こんなものだ」と諦めている方がたくさんいます。
でも、適切な治療で生活が変わった方も、同じくらいたくさんいます。
あなたの頭痛のこと、ぜひ私たちに話してください。

 


※ このコラムは一般的な情報提供を目的としており、個別の医療アドバイスに代わるものではありません。症状が気になる方は、頭痛外来へ受診してください。

 


参考:
Shibata M et al. The Journal of Headache and Pain (2025) 26:240.
Sakai F et al. Cephalalgia (2023) 43: 1–14.

 

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