“片頭痛治療の いまとこれから” について講演しました
2025年12月18日、“片頭痛治療のいまとこれから”と題して、大阪頭痛診療Webセミナーで講演いたしました。要約は以下のようです。
片頭痛治療の「いま」と「これから」:知っておきたいポイント
1) 片頭痛は「よくある頭痛」ですが、生活に大きく影響します
片頭痛は、仕事・家事・育児など日常生活に支障が出やすい頭痛です。症状や頻度に応じて、適切な診断と治療を行うことが大切です。
2) 「片頭痛らしさ」の目安
片頭痛では、次のような特徴がよくみられます。
中等度〜重度の頭痛
歩行や階段などの日常動作で悪化
吐き気・嘔吐
光や音がつらい(光過敏・音過敏)
また、キラキラした光が見えるなどの前兆を伴うタイプもあります。



(Soraにて動画生成)
3) 受診を急いだ方がよい「危険サイン」
頭痛の多くは一次性頭痛(片頭痛など)ですが、まれに検査が必要な病気が隠れていることがあります。特に次のような場合は、早めに受診・検査をおすすめします。
しびれ、麻痺、意識の変化など神経症状がある
突然始まった激しい頭痛
50歳以降に初めて出てきた頭痛
いつもと違う/最近パターンが変わった頭痛
痛みや症状が進行する など

4) 片頭痛発作が起きたときの治療(急性期治療)
片頭痛の急性期治療は、主に薬で発作を止める治療です。
代表的な選択肢として、
アセトアミノフェン
NSAIDs(痛み止め)
トリプタン
ラスミジタン(レイボー)
リメゲパント(ナルティーク)
吐き気が強いときの制吐薬(例:メトクロプラミド、ドンペリドン)


5) 「痛み止めの使いすぎ」に注意(薬剤の使用過多による頭痛)
急性期治療薬は有効ですが、使いすぎると頭痛が増えて慢性化することがあります。
目安として、3か月以上つづけて
トリプタンが月10日以上
NSAIDsが月15日以上
だと「薬剤の使用過多による頭痛(MOH)」を疑います。
6) 頭痛が多い方は「予防治療」を検討します
頭痛が増えてきた場合は、発作止めだけでなく、頭痛を起こりにくくする予防治療を考えます。
特に、頭痛が多い状態(例:月15日以上の頭痛が3か月超など)では、慢性片頭痛の可能性もあり、治療方針が重要になります。
7) CGRP関連抗体薬(注射の予防薬)という選択肢
片頭痛の仕組みに関わるCGRPを標的にした注射薬が、片頭痛の予防治療として日本でも使われています。
フレマネズマブ(アジョビ)
ガルカネズマブ(エムガルティ)
エレヌマブ(アイモビーグ)
これらは、大規模試験で安全性と有効性が示され、効果発現が比較的早く、副作用が少ないことも特長とされています。
なおアジョビは、4週ごとまたは12週ごとの通院注射ができます。
条件により在宅での自己注射(4週ごと)も選べます。




8) 「頭痛ダイアリー」と「オンライン診療」の活用
頭痛は、回数・強さ・薬の使用状況を記録すると、治療方針が立てやすくなります。頭痛ダイアリーやアプリでの記録は有用です。
また、状態が安定している方などでは、オンライン診療が役立つ場合があります(事前に対面で検査を行い、危険な頭痛を除外することが重要)。


まとめ
片頭痛や慢性の頭痛は生活への影響が大きいため、正しい診断と治療が大切です。急性期治療薬は有効ですが、使いすぎは頭痛の慢性化につながることがあります。近年はCGRP関連薬など、片頭痛の仕組みに基づいた予防治療も選べるようになり、よりよいQOL(生活の質)を目指せる時代になってきています。















