片頭痛の新規予防薬について(CGRP関連薬)
〇どんな薬?今までの薬とどう違う?
片頭痛の新規予防薬である、抗CGRP抗体製剤;エムガルティ®︎(一般名ガルカネズマブ)、アジョビ®︎(一般名フレマネズマブ)、抗CGRP受容体抗体製剤;アイモビーグ®︎(一般名エレヌマブ)が使用可能です。片頭痛が強く、日常生活や仕事、家事に支障をきたす方が対象となります。
今までの片頭痛予防薬と違い、片頭痛を起こす物質のうちで主役といわれるCGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)を標的として開発された、モノクローナル抗体といわれる薬です。片頭痛に対して、特異的な作用があると考えられています。
片頭痛の原因のひとつとされる物質を特にターゲットとしており、数か月以上にわたり毎月の片頭痛の日数が多い方、慢性に片頭痛が続いている方に適応があります。
〇どのくらい効果がある?薬の使い方は?
4週間または1か月に1回の皮下注射で、頭痛のおこる日数が減ることや、頭痛の辛さが軽くなって生活改善につながることが期待できます。内服の片頭痛予防薬に比べて、早く効果が現れることも特徴です。
上図のように、当院でエムガルティ投与された方の治療経過において、頭痛の改善がみられています。アジョビ、アイモビーグ投与された方も、経過をみると同様に頭痛の改善がみられます。
エムガルティの初回は2本注射するため自己負担額は高くなりますが、その分血中濃度が上がり効果がより早く現れることが期待されています。エムガルティの2回目以降は30日ごとに1本、アジョビとアイモビーグは28日ごとに1本の注射となります。
薬の開始に際しては、専門医による診察・MRIなど適切な検査で片頭痛と診断されること、頭痛ダイアリーや頭痛アプリ(頭痛管理プログラムをお勧めしています)などで頭痛の日数や程度を確認する必要があります。
当院では、オンライン診療による在宅自己注射にも対応しています。片頭痛が強かったり痛みが頻回にあるけれども、仕事や家事などが忙しくクリニックまで定期的に受診することが難しいと思われるようでしたら、一度当院でご相談ください。
効果には個人差があり、必ずしも著効しないこともあります。その場合、他の抗体製剤への変更が効果を示すことがあります。また、内服片頭痛予防薬を上手く組み合わせることで、良好に頭痛をコントロール出来ることが多いと感じています。
〇費用は?医療費の払い戻し制度がある?
新しい抗体製剤であり薬価はやや高いため、今までの予防薬が効かなかった方や、予防薬が副作用で続けられなかった方が保険診療の対象です。3割負担の方ですと自己負担額は、エムガルティは1本あたり約13,550円、アジョビは約12,400円、アイモビーグも約12,400円です。エムガルティは、初回は2本注射しますので約27,100円となります(再診料などは別途かかります)。
企業の健康保険組合や、共済組合に加入している方は、付加給付制度が適用されることがあります。これは一か月間の医療費が一定の額を超えた場合、超えた部分の自己負担額を払い戻してもらえる制度です。自己負担限度額は加入している健康保険組合によって異なりますが、25,000円程度としているところが多いようです。
例えばエムガルティは初回に2本注射をするため、自己負担額はこの限度額を超えますので、超えた分は払い戻されます。また在宅自己注射の場合は、2本以上を同時に処方することで、限度額を超えた部分の払い戻しを受けることができます。
なお、付加給付があるのは大手企業の健康保険組合などに限られ、全国健康保険協会(協会けんぽ)には付加給付制度はないようです。国民健康保険には付加給付制度がありません。付加給付については健康保険組合ごとに異なりますので、加入しておられる保険事業所へお問い合わせください。