「目の奥をえぐられるような、これまで経験したことのない激痛」「決まった時間に、同じ側の頭が痛くなる」・・・そんな症状を訴えて受診される方がたまにおられます。今回は群発頭痛という病気について、診断と治療の両面からご説明します。

群発頭痛はどんな病気?

群発頭痛は、片側の目の奥・眼窩(がんか)の上・こめかみのいずれかに、発作的に非常に強い痛みが15分〜3時間ほど起こる頭痛です。痛みと同じ側に、次のような症状を伴うのが特徴です。

  • 目の充血・涙が出る
  • 鼻づまり・鼻水
  • まぶたの腫れやたれ下がり
  • 額や顔の汗


(Eur J Neurol. 2023;30:2955–2979よりNotebookLMにて生成)

片頭痛では静かに横になるほうが楽なのに対して、群発頭痛の発作中はじっとしていられず、歩き回ったり体を揺すったりするのも大きな特徴です。

いったん発作が始まると、数週間〜数ヶ月続く「群発期」の間、1日に1回または何度も(2日に1回〜1日8回程度)発作が繰り返されます。就寝後数時間や明け方に起こり、頭痛で目覚めてしまうこともしばしばです。群発期が終わると、数ヶ月〜数年にわたって発作のない時期(寛解期)が続きます。

仕事も家事もできなくなるほどの痛み

群発頭痛の痛みの強さは頭痛の中でも激しいものとされ、世界三大激痛の一つともいわれます(他は尿路結石、心筋梗塞など)。発作が起きている間は、仕事はもちろん、家事や会話すら難しくなる方がほとんどです。それが1日に何度も、数週間から数ヶ月にわたって繰り返されるため、日常生活・仕事・家庭生活への支障はきわめて大きくなります。


(Eur J Neurol. 2023;30:2955–2979よりNotebookLMにて生成)

診断までに数年かかることも珍しくありません

痛みの特徴がはっきりしている病気でありながら、実際には診断がつくまでに数年を要するケースも少なくありません。片頭痛と診断されたり、「目の奥の痛み」や「鼻づまり」から眼科や耳鼻科、歯科を受診し、なかなか頭痛を専門とする医療機関に行きつかないことが背景にあります。副鼻腔炎、歯の病気と間違われやすいことも、診断が遅れる一因です。正しい診断がつくまでの間、患者さんは長期間つらい思いを強いられることになります。

「まれな病気」ではありません

群発頭痛は以前、人口の0.1〜0.2%程度とされる、非常にまれな病気と考えられてきました。しかし実際には、頭痛を専門に診る外来では決して珍しい病気ではなく、診断・治療を必要としている患者さんに日常的に出会います。


(Neurology. 2026 Jun 9;106(11):e214862よりNotebookLMにて生成)

また、これまで「男性に多い病気」というイメージが強くありましたが、近年の大規模な調査では、女性患者さんの割合が増加していることが報告されています。地域によってはすでに女性の患者数が男性を上回ったとの報告もあり、女性の患者さんも決して少なくありません。「男性の病気」という思い込みが、女性の診断の遅れにつながっている可能性も指摘されています。

診断が重要です

群発頭痛と診断する際には、脳腫瘍などによる二次性の頭痛ではないかについて確認する必要があります。まずは脳神経外科や脳神経内科などへの受診が勧められます。


(Eur J Neurol. 2023;30:2955–2979よりNotebookLMにて生成)

治療は進歩しています

群発頭痛は、適切な治療によって痛みをコントロールしながら日常生活を送れるようになる病気です。当院の頭痛外来でも、発作時の対応から発作を減らすための治療まで、患者さんと一緒に取り組んでいます。

発作が起きたときの治療(急性期治療)

  • トリプタン製剤の自己注射(スマトリプタン皮下注):効果の現れが早く、保険診療で使用できる第一選択の治療法です。
  • 酸素吸入療法:高流量の酸素を15分程度吸入することで発作を鎮める治療法です。2018年度の診療報酬改定により、群発頭痛に対する在宅酸素療法(HOT)が保険適用となり、自宅でも使いやすくなりました。
  • 点鼻薬や内服のトリプタン製剤も試みられます。

発作を減らすための治療(予防療法)

  • ベラパミル(カルシウム拮抗薬):国内では2011年に片頭痛・群発頭痛への使用が保険診療上認められ、現在第一選択薬として広く使われています。心臓の働きに影響することがあるため、慎重に量を調整します。
  • ステロイド療法:ベラパミルが効果を現すまでの橋渡し療法(移行期治療)として、プレドニゾロンなどのステロイド薬を短期間処方します。即効性はありますが、副作用があるため長期には使用できません。
  • リチウム製剤、後頭神経ブロック(注射による治療)、トピラマートなど:ベラパミルが使えない場合や効果が不十分な場合の選択肢ですが、保険適応の点から本邦ではあまり使用されません。
  • 海外では、CGRP関連抗体薬の有効性が報告されつつあります。

群発期に入りそうな時期からあらかじめ予防療法を始めることで、発作の頻度や強さを抑えられることも少なくありません。


(Eur J Neurol. 2023;30:2955–2979よりNotebookLMにて生成)

これから期待される治療

海外では、迷走神経刺激療法などの新しい治療法も使われ始めています。国内ではまだ普及していませんが、今後の広がりが期待されています。

頭痛専門医からのメッセージ

群発頭痛は特徴的な症状から診断されますが、発作の時間が短く痛みのない期間が長いなどの理由から、頭痛外来への受診までに何年もかかる方も珍しくありません。その間に仕事や家事に支障をきたすことの損失は、大きいものがあります。
頭痛を起こらなくする治療法はまだ確立していませんが、痛みをコントロールして日常生活上の支障を少なくすることは可能です。もしかして、と思われる方はぜひ一度、頭痛外来にご相談ください。診断から急性期治療・予防療法まで、患者さんが安心して日常生活を送れるよう、一緒に取り組んでいきます。


本コラムは、国際頭痛分類第3版(ICHD-3)、頭痛の診療ガイドライン2021、European Academy of Neurology(EAN)群発頭痛治療ガイドライン(2023年)、Neurology. 2026 Jun 9;106(11):e214862 等の文献を参考に作成しています。

医療法人脳神経外科たかせクリニック