片頭痛予防の注射薬を続けていても頭痛が強い、どうすればいい?
「エムガルティ」「アジョビ」「アイモビーグ」といった片頭痛予防の注射薬(CGRP関連抗体薬)を続けているのに、月に何度か強い頭痛が出てしまう——。そのような方もときにおられます。CGRP関連抗体薬は片頭痛の頻度を大きく減らす効果的な治療ですが、すべての方の発作を完全になくせるわけではありません。今回は、予防注射を続けていても頭痛が強いときに、どのような対策があるのかを整理してご紹介します。
まずは「発作が起きたときの薬」を見直す
予防注射を使っていても発作そのものが完全にゼロになるとは限らないため、発作時に飲む薬(急性期治療薬)が今の症状に合っているかを見直すことがまず大切です。
トリプタン製剤が効いている方の場合
- できるだけ早いタイミングで服用する:頭痛が軽いうちに使うほど効果が出やすいとされています。
- 剤形を変えてみる:錠剤で効果不十分な場合、点鼻薬や皮下注射タイプのトリプタン(スマトリプタン注射など)に切り替えると効果が高まることがあります。
- NSAIDs(痛み止め)を併用する:トリプタンと組み合わせることで、効果を底上げできる場合があります。
トリプタンが効きにくい方・使用できない方の場合
選択肢
心血管疾患などでトリプタンが使いにくい方や、これまでのトリプタンで十分な効果が得られない方には、次のような薬剤が選択肢になります。
- ゲパント系薬剤(ナルティークOD錠:リメゲパント):2025年12月に日本で発売された、CGRPの働きをブロックする飲み薬です。発作時の頓服としてだけでなく、隔日服用による予防目的での使用も可能な薬剤です。
中国で行われた実臨床研究では、他の急性期治療薬・予防薬に反応しなかった患者さんを含む集団でも、服用後0.5〜48時間にわたって中等度〜重度の痛みを感じる方の割合が有意に減少し、痛み・生活への支障・随伴症状(吐き気など)のいずれについても「改善した」と回答した方の割合が大きく増加したことが報告されています。副作用の頻度も低く(全体の6.1%)、いずれも軽度でした(Yang, et al. 2024)。 - ラスミジタン(レイボー):血管を収縮させない作用機序の薬で、心血管疾患のある方にも使用しやすいとされています。
CGRP抗体薬とゲパント系薬剤の併用について
前述の中国の実臨床研究では、CGRP抗体薬(エプチネズマブ)による予防治療を続けながら、発作時にリメゲパントを頓服として併用した患者さんのグループにおいても、痛みの軽減効果と安全性が確認されています(Yang, et al. 2024)。予防注射を続けながら、発作が出たときに頓服薬を適切に組み合わせることは、有効かつ安全な対策となり得ます。
なお、CGRP関連抗体薬による予防治療を続けながら、予防薬としてゲパント系薬剤を使用することは、日本の保険診療ではできません。

(Yang, et al. 2024よりNotebookLMにて生成)
予防注射を「続けること」の意義を見直す
CGRP関連抗体薬は、開始してすぐに効果が頭打ちになるわけではなく、治療を継続することで少しずつ頭痛の残存日数が減っていくことが報告されています。
継続の重要性を示すデータ
ギリシャで行われた、月1回のフレマネズマブ(アジョビ)注射を24か月間継続した患者さんを対象とした実臨床研究では、片頭痛日数(月あたり)は治療開始前の平均11.9日から、12か月後には5.1日、24か月後には4.3日へとさらに減少しました。また、月あたりの片頭痛が4日未満まで抑えられた「良好にコントロールされた」患者さんの割合は、12か月時点では19.3%でしたが、24か月時点では29.8%まで増加していました。反対に、コントロール不十分な状態(月6日超)の方の割合は、12か月時点の17.5%から24か月時点には7.8%まで減少しています(Argyriou, et al. 2026)。
この結果は、治療開始から半年〜1年程度で「思ったほど効果が出ていない」と感じても、治療を継続することでさらに改善する可能性があることを示しています。

(Argyriou, et al. 2026よりNotebookLMにて生成)
あわせて確認したいこと
- 注射のスケジュールが予定通りに実施できているか(投与間隔が空きすぎていないか)
- 自己注射の手技に問題がないか
- 体調不良や通院間隔の乱れなどで、投与が遅れていないか
思うように効果を実感できない場合、まずは治療の継続状況を主治医と一緒に確認することが大切です。
予防薬の追加・切り替えを検討する
生活に支障が出るほどの頭痛が続く場合は、治療の追加や変更を検討します。
他のCGRP関連抗体薬への切り替え
CGRPそのものを標的とする薬剤(例:アジョビ、エムガルティ)から、CGRPが結合する受容体を標的とする薬剤(例:アイモビーグ)へ切り替える、あるいはその逆を行うことで効果が改善する方がいます。
ただし、前述のギリシャの研究では、以前に別のCGRP関連抗体薬を使用したことがある患者さんは、そうでない患者さんに比べて「良好なコントロール」に到達しにくい傾向があることも示されています(オッズ比2.1、非使用者でより到達しやすい)(Argyriou, et al. 2026)。そのため、同じ系統の薬剤を切り替える場合は、過度に高い効果を期待しすぎず、主治医と相談しながら進めることが大切です。
従来の予防薬の併用
| 薬剤の種類 | 代表薬 | 日本での保険適用(片頭痛予防) |
|---|---|---|
| 抗うつ薬 | アミトリプチリン | あり |
| β遮断薬 | プロプラノロールなど | あり |
| 抗てんかん薬 | トピラマート | 国内では片頭痛への保険適用なし(自費/海外での使用が中心) |
※ 保険適用の範囲や用法は変更されることがあります。実際の治療については必ず主治医にご確認ください。
CGRP関連抗体薬で効果が乏しい場合の「飲み薬タイプ」の予防薬への変更
新しい選択肢
複数のCGRP関連抗体薬を試しても十分な効果が得られなかった患者さんに対して、CGRP受容体拮抗薬(ゲパント系)の飲み薬であるアトゲパント(アクイプタ、2026年4月発売)やリメゲパント(ナルティーク、2025年12月発売)に切り替えるという選択肢もあります。
スペインで行われた実臨床研究では、抗CGRP抗体薬の効果不十分・効果減弱のために中止し、その後アトゲパントに切り替えた44名の患者さんを追跡したところ、治療3か月後に月間頭痛日数が50%以上減少した方が18.2%、30%以上減少した方が25.0%でした。中等度〜重度の頭痛日数でみると、50%以上減少した方は33.3%とより高い割合を示しています。患者さん自身の実感(全般的な印象評価)でも、59.1%の方が何らかの改善を報告しました。
一方で、便秘(31.8%)を中心とした副作用が全体の半数に見られ、11.4%の方が副作用のために治療を中止しています(Jaimes, et al. 2025)。
抗体薬で十分な効果が得られなかった方にとって、作用機序の異なる飲み薬という新しい選択肢が加わったことは重要な意味を持ちますが、効果・副作用ともに個人差があるため、導入にあたっては主治医とよく相談することをおすすめします。

(Jaimes, et al. 2025よりNotebookLMにて生成)
まとめ
- 予防注射を使っていても頭痛が残る場合、まず発作時の頓服薬が適切かどうかを見直しましょう。
- CGRP関連抗体薬は継続することで効果が高まっていくことが実臨床データで示されています。効果判定を急ぎすぎず、投与スケジュールの乱れがないかも確認しましょう。
- それでも症状が十分に改善しない場合は、他のCGRP関連抗体薬への切り替え、従来の予防薬の併用、あるいはゲパント系の飲み薬への変更が選択肢となります。
- 薬剤の保険適用や具体的な使い方は、患者さんの病状や治療歴によって異なります。気になる症状がある場合は、自己判断で治療を中断・変更せず、必ず主治医にご相談ください。
頭痛専門医からのひとこと
片頭痛予防薬であるCGRP関連抗体薬は画期的な薬ですが、充分な効果が現れない患者さんも一定数おられます。
頭痛治療は進歩しつつあり、そのような場合でも頭痛を改善していくための二の手・三の手があります。
どうぞ諦めずに通院・治療を続けることをお勧めします。またご自身の頭痛の現状を理解するために、頭痛ダイアリーをつけることは重要です。
参考文献
1) Jaimes A, Rodríguez-Vico J, Pajares O, et al. Retrospective cohort study of anti-CGRP monoclonal antibody unresponsive migraine individuals treated with atogepant: The RESCUE study. Cephalalgia. 2025;45(6):1-10.
2) Yang Z, Wang X, Niu M, et al. First real-world study on the effectiveness and tolerability of rimegepant for acute migraine therapy in Chinese patients. J Headache Pain. 2024;25:160.
3) Argyriou AA, Dermitzakis EV, Rikos D, et al. Achieving International Headache Society-aspired optimal migraine control in fremanezumab-treated patients: A post-hoc analysis of a real-world, prospective study from the GRASP study group. Cephalalgia. 2026;46(6):1-10.
本コラムは一般的な情報提供を目的としており、個々の患者さんの治療方針を示すものではありません。薬剤の適応・用法・保険適用は日本国内の最新の添付文書・薬価基準に基づき変更される場合がありますので、治療に関することは必ず主治医にご相談ください。
















