今年はひときわ暑い夏です。夏になると、「冷たいものを食べた瞬間に頭がキーンと痛む」「プールやアウトドアの後に頭痛がする」「なんとなく夏は頭痛が増える気がする」などと感じる方も多いでしょう。今回は、夏に注意していただきたい頭痛について、原因やメカニズム、対処法をできるだけわかりやすく解説します。

1. 冷たいものの飲食や冷房による頭痛(寒冷刺激による頭痛)

寒冷刺激による頭痛は「頭部に外部から当てられた寒冷、あるいは冷たいものの摂取・吸入によりもたらされる頭痛」とされ、大きく2つのタイプに分けられます。

①かき氷・アイスクリーム頭痛(冷たいものの摂取または冷気吸息による頭痛)

いわゆる「アイスクリーム頭痛」として知られているタイプです。かき氷やアイスクリームなど冷たい食べ物・飲み物が口の中(口蓋や喉の奥)を通過することで、額や側頭部に鋭い痛みが数秒から数十分ほど生じます。冷たいものの摂取・冷気の吸入から誘発され、刺激がなくなれば10分以内に消失することが特徴とされています。

(Gemini Notebookにて生成)

なぜ起こるのか

冷たい刺激が口の中の神経(口蓋を通る三叉神経の枝)を刺激し、その信号が関連痛として額や側頭部に伝わることで痛みが生じると考えられています。ゆっくり摂取しても起こることがありますが、かき氷などを急いで食べたときのほうが誘発されやすい傾向があります。

片頭痛をお持ちの方は、そうでない方に比べてこの頭痛を経験しやすいことが知られています。予防としては、冷たいものを一気に口に入れず、少量ずつゆっくり摂取する、口の中で少し温めてから飲み込むといった工夫が有効です。

②冷房など、外的寒冷刺激による頭痛

厳しい寒さに頭部が直接さらされることで生じる頭痛です。真冬の屋外や、強く効いた冷房の風が頭部に直接当たり続けるような状況、冷水に飛び込んだ際などに起こります。外部からの寒冷刺激が頭部に加わっている間に誘発され、刺激を取り除いてから30分以内に消失するとされています。

夏の落とし穴:冷房による寒冷刺激

夏は「暑さ」だけでなく「冷房による冷え」も頭痛の引き金になり得ます。オフィスや電車で冷房の風が首や頭に直接当たり続けたり、汗をかいたまま強い冷房の部屋に入って急激に体を冷やしたりすると、この寒冷刺激による頭痛が誘発されることがあります。冷房の風向きを調整する、羽織るものや膝掛けを用意する、汗をかいたら早めに拭き取ってから涼しい場所に移動するといった対策をおすすめします。

2. 夏のレジャー・アクティビティに伴う頭痛

海やプール、登山やダイビングなど、夏ならではのレジャーには、それぞれ特有のメカニズムで生じる頭痛があります。いずれも一次性頭痛疾患(片頭痛や緊張型頭痛など)とは異なる、状況特異的な頭痛として国際頭痛分類に記載されています。

①水泳ゴーグルなど、頭蓋外からの圧迫による頭痛

水泳用ゴーグルをきつく装着しすぎた場合や、きついヘッドバンド・ヘルメットの着用によって、頭皮や額の周囲に持続的な圧迫や牽引が加わることで生じる頭痛です。「頭蓋外からの圧迫による頭痛」として、圧迫を受けている部位を中心に痛みが最大となり、圧迫を解除してから1時間以内に消失することが診断の目安とされています。

対策のポイント
  • ◯ゴーグルのベルトは「跡がつかない程度」を目安に締めすぎない
  • ◯長時間の使用時は途中でベルトを緩めて休憩をはさむ
  • ◯自分の顔の形に合ったサイズ・形状のゴーグルを選ぶ

②高山性頭痛

登山などで標高2,500mを超える地点まで登った際に生じる、両側性で軽度から中等度の頭痛です。運動や体を動かすこと、前かがみの姿勢、咳などで悪化しやすいという特徴があります。標高2,500m未満まで下山すれば24時間以内に自然に治まります。標高が高くなるほど酸素分圧が下がることで生じると考えられており、登山者の3割以上に起こるとされています。

(Gemini Notebookにて生成)

頭痛以外に吐き気や食欲不振、疲労感、まぶしさ、めまい感、睡眠障害などを伴う場合は「急性高山病」の可能性があり、注意が必要です。予防には、高地で激しい運動をする前に数日間の順化期間を置くこと、アルコールを控えること、こまめな水分補給が挙げられます。市販のアセトアミノフェンやイブプロフェンなど単一成分の鎮痛薬が有効な場合もありますが、めまいや吐き気などを伴う場合は無理をせず下山し、必要に応じて医療機関を受診してください。

③潜水時頭痛

水深10mを超える潜水時、特に減圧が不十分な状態で浮上する際に生じやすい、しばしば重度の頭痛です。混乱、ふらつき、動作のぎこちなさ、呼吸困難、顔のほてりなど、二酸化炭素中毒を思わせる症状を伴うことが特徴とされています。酸素投与により速やかに軽快することが多く、投与できなくても潜水終了後3日以内には自然に消失するとされています。

(Gemini Notebookにて生成)

ダイバーが空気を節約しようと意識的に呼吸を抑えたり、呼吸パターンが乱れたりすることで体内に二酸化炭素がたまり、脳血管が拡張して頭蓋内圧が上がることが背景にあると考えられています。適切な呼吸法を守り、無理な潜水計画を避けることが重要です。潜水中や潜水後の激しい頭痛は、減圧症など他の重篤な病態が隠れている可能性もあるため、自己判断せず速やかに医療機関に相談してください。

3. 夏の日差し・暑さなどによる「片頭痛」の誘発

片頭痛をお持ちの方にとって、夏の環境は誘因(トリガー)の宝庫ともいえます。頭痛診療ガイドラインでも、睡眠不足や精神的緊張、疲労と並んで「天候の変化」が片頭痛の代表的な誘因の一つとして挙げられています。

①強い日差し(光)や温度差

強い日差しやまぶしさは、片頭痛発作を誘発する要因として広く知られています。片頭痛では光刺激に対する脳の反応が過敏になっていると考えられており、屋外の強い日差しから急に涼しい室内に入るような気温差の刺激も、自律神経のバランスを揺さぶり頭痛の引き金になり得ます。

できる工夫
  • ◯屋外では帽子やUVカット・偏光サングラスで光刺激を和らげる
  • ◯屋内外の気温差をできるだけ小さくする(冷房の設定温度を下げすぎない)
  • ◯誘因を過度に恐れて生活を制限しすぎる必要はありませんが、自分にとっての誘因を頭痛日記などで把握しておくことは有用です

②脱水

発汗量が増える夏は、知らないうちに脱水状態になりやすい季節です。脱水は片頭痛の誘因となるだけでなく、頭痛そのものを悪化させる要因としても知られています。喉の渇きを感じてから飲むのではなく、こまめに水分を補給する習慣を意識してください。特に、屋外での活動やレジャーの際は、あらかじめ十分な水分を用意しておくことをおすすめします。

(Gemini Notebookにて生成)

4. 熱中症による長期的な影響

ここまでは主に一時的・状況依存的な頭痛についてお話ししましたが、最後に近年報告された、より長期的な視点での知見をご紹介します。

2025年にドイツの一般診療データベース(IQVIA Disease Analyzer)を用いた大規模な後ろ向きコホート研究が報告されました。この研究では、熱中症(ICD-10:T67.0)と診断された成人5,794人と、年齢・性別・既往歴などをそろえた熱中症の既往のない28,970人を、最長5年間追跡しています。

研究の主な結果
  • ◯5年間の追跡で、熱中症を経験した人の8.8%が新たに片頭痛と診断された(熱中症のない人では4.0%)
  • ◯統計解析の結果、熱中症は片頭痛発症リスクを約2.3倍高めることと関連していた(ハザード比2.26、95%信頼区間2.00〜2.57)
  • ◯このリスク上昇は男女ともに、また年齢層を問わず一貫して認められた
  • ◯片頭痛のサブタイプ別に見ても、前兆のある片頭痛・前兆のない片頭痛のいずれについても同様のリスク上昇が確認された

(Brain Sci. 2025;15(9):1011.より Gemini Notebookにて生成)

この背景には、重度の熱中症が脳血管の血液脳関門を一時的に傷つけ、脳内に炎症を引き起こすことで、片頭痛発症に関わる神経系(三叉神経血管系)の感受性を高めてしまう可能性が指摘されています。ただし、この研究は「関連」を示したものであり、熱中症が必ず片頭痛を引き起こすと断定するものではなく、生活環境や職業などの要因が結果に影響した可能性も否定できません。それでも、熱中症を一度経験された方は、その後しばらくの間、頭痛の頻度や性状に変化がないか気にかけていただくとよいでしょう。

何より重要なのは、熱中症そのものを予防することです。暑い時間帯の外出を避ける、こまめな水分・塩分補給、適切な休憩を心がけ、めまいや吐き気、意識がぼんやりするといった熱中症の兆候があれば、早めに涼しい場所へ移動し、必要であれば医療機関を受診してください。

まとめ

頭痛のタイプ 主な原因・状況 対処のポイント
冷たいものの摂取・冷気吸息による頭痛 かき氷・アイスなどを急いで摂取 少量ずつゆっくり摂取する
外的寒冷刺激による頭痛 強い冷房、冷水など 冷房の風を避ける、汗を拭いてから涼む
頭蓋外からの圧迫による頭痛 ゴーグル・ヘッドバンドの締めすぎ 締め付けを緩める、休憩をはさむ
高山性頭痛 標高2,500m超への登山 順化期間を置く、水分補給、無理をしない
潜水時頭痛 深い潜水・不十分な減圧 適切な呼吸法、無理な潜水計画を避ける
片頭痛の誘発 強い日差し、気温差、脱水 サングラス・帽子、こまめな水分補給
熱中症後の片頭痛リスク 熱中症の既往 熱中症予防が第一、経過に注意

頭痛専門医からのひとこと

夏には特徴的な頭痛が起こることがあります。熱中症による頭痛は、最も気をつけなければならないものの一つです。そして市販の鎮痛薬を使い過ぎると、悪影響が出ることもあります。頭痛が今までもあったような頭痛であれば、すぐには心配ないでしょう。しかし普段と違う、これまでなかったような頭痛には注意が必要です。おかしいと思ったら、必ず脳神経外科、脳神経内科や頭痛外来に受診してください。

本コラムは国際頭痛分類第3版(ICHD-3)および頭痛の診療ガイドライン2021、Kostev K, et al. “Heatstroke Is Associated with an Increased Risk of Chronic Headache: A Retrospective Cohort Study.” Brain Sci. 2025;15(9):1011. の内容をもとに、一般の方向けにわかりやすく解説したものです。個別の症状については医療機関にご相談ください。

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